先日厚生労働省は、長時間残業が疑われる事業場に対し、
労働基準監督署が行った監督指導結果(平成30年度)を公表しました。
監督指導実施29,097事業場のうち69.6%の事業所が
労働基準法などの法令違反がありました。
その主な違反内容のトップは「違法な長時間労働があったもの」です。(40.4%)
この「違法な長時間労働があったもの」について監督指導事例で主に3点があげられています。
a)36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働を行わせたこと
b)36協定の特別条項で定めた限度時間を超えることの回数(年6回)を
上回る時間外労働を行わせていたこと
C)36協定の締結当事者の要件を満たさず、36協定が無効であった、
にもかかわらず法定外の時間外労働、休日労働を行わせたこと
今日はこの36協定と呼ばれる「時間外労働 休日労働に関する協定届」
についてご紹介します。
36協定とは
・労働基準法36条に基つく労使で締結した時間外・休日労働に関する協定のこと
(この協定の有効期限は1年間)
・会社が法定時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働を命じる場合、
労働基準監督署へ36協定の届出が必要です。
(中小零細企業の規模を問いません)
締結当事者の要件とは
c)にある「締結当事者の要件」とは、「労働者側代表」が
・すべての労働者の過半数を代表している
・すべての労働者が参加した民主的な手続きで選出された 労働者がであることです。
労働者側の代表が「会社が指名した者」や「管理監督者」の場合は、
締結当事者の要件を満たさないことになります。
その場合、仮に36協定を締結し、労働基準監督署に届出をしても協定は無効となります。
(会社は労働者に対して法定時間を超える労働を命じることは、法違反となります)
36協定で定める上限時間とは
a)で「36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働を行わせたこと」とあります。
36協定で定める法定外労働時間は「法律に定める時間外労働の上限まで」の範囲となります。
現在の法律で定める時間外労働の上限は原則「月45時間まで」「年360時間まで」です。
36協定の特別条項とは
決算業務やトラブル対応など「臨時的」かつ「特別な事情」で労使が合意する場合、
36協定「特別条項」を締結することで上記の原則を超えた時間、
会社は法定時間外労働を命じることができます。
ただし、原則の上限を超える場合でも下記の内容を満たす必要があります。
・特別条項で上限を拡大できるのは年に6回まで ※b)はこの回数制限に違反しています。
・時間外労働+休日労働合わせて月100時間未満、かつ2~6ヶ月間の平均が80時間以内であること
・時間外労働は年間合計720時間以内であること
ハローワークの求人票にも「時間外労働時間」の枠が新設されます
2020年1月からハローワークの求人票が新書式に変わります。
時間外労働時間について、
現行の求人票:
「就業時間」枠内に「時間外(有・無)月平均◯◯時間」と1行で表記
新書式の求人票:
「時間外労働時間」枠が新設
全ての求人に対して「36協定における特別条項」の「有・無」について、特別条項がある場合は
その「特別な事情・期間等」の記載が必要となります。
法定外時間労働を行うと合わせて割増賃金も発生しますし、
また長時間労働を行う労働者に対しては面接指導など健康障害を防止する対応がもとめられます。
労働生産性向上の取り組みの必要性が謳われる昨今。
ハローワークの求人票でも「時間外労働」についての詳細な記載が
求められるようになってきました。
求職者も会社の時間外労働がどのくらいあるのかを応募する際の検討事項としています。
36協定を締結したので締結した時間まで残業することができる、
という考え方から、36協定や特別条項を必要としない(法定時間内に終業できる)
職場にしていこうという動きが増えていくことを願ってやみません。