先日厚生労働省より
「令和2年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
第30 条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」
等について」
という長い長いタイトルの通達が発表されました。
派遣労働者の同一労働同一賃金
来年4月から始まる同一労働同一賃金制度により派遣元事業主は、派遣労働者の待遇を
①「派遣先均等・均衡方式」(派遣先の労働者と同程度の待遇を確保すること)
②「労使協定方式」(労使協定による待遇の確保)
のどちらかによる待遇決定方式により確保しなければなりません。
この通達は②「労使協定方式」の具体的な水準を示す指針となるものです。
この通達にはこれまで派遣労働者にはなかった、
「賞与」、「通勤手当」、「退職金」の水準について明確に記載されています。
今回はその概要を「基本給・賞与・手当等」、「通勤手当」、「退職金」の3項目に分けてざっくりとご紹介します。
基本給・賞与・手当等
算出方法:職種別の基準値(①)×能力・経験調整指数(②)×地域指数(③)
①職種別の基準値
「賃金構造基本統計調査の特別集計により算出した賃金」もしくは「職業安定業務統計の特別集計による求人賃金(月額)の下限額の平均」を基に一定の計算方法により賞与込みの時給に換算した額
②能力・経験調整指数
能力及び経験の代理指標として、「賃金構造基本統計調査の特別集計」により算出した勤続年数別の所定内給与(産業計)に賞与を加味した額により算出した指数
具体的には下記表となります。(勤続0年を100とする)
(厚生労働省資料より)
この表によると1年経過で16%、2年経過で26.9%・・・と毎年賃金はアップしていくことに
なります。(この内容は一部ニュースに取り上げられていましたね)
③地域指数
「職業安定業務統計の求人平均賃金」をもとに、都道府県及びハローワークの管轄地域別に、
全国計を100として職業大分類の構成比の違いを除去して算出した指数
(ちなみに第14回同一労働同一賃金部会時の地域指数によると東京は114.6、沖縄は83.8と地域に
よりかなり指数は異なります)
この①、②、③を具体的に図で表すと下記になります。
(厚生労働省資料より 一部編集)
通勤手当
下記(1)または(2)を労使で選択する。(両方選択することも可能)
(1)実費支給により「一般通勤手当と同等以上」を確保
(2)一般の労働者の通勤手当に相当する額と「同等以上」を確保
※一般通勤手当:一般の労働者の1時間当たりの通勤手当に相当する額「72円」
退職金
下記(1)~(3)いずれかを労使で選択する
(1)一般の労働者の退職手当制度と比較して設定する
(2)一般の労働者の退職金に相当する額と「同等以上」を確保する
(3)中小企業退職金共済制度等に加入する
これらをまとめると下記図となります。
(厚生労働省資料より)
来年4月以降、法改正により派遣元事業者は派遣労働者へ厚生労働省が示す基準と同等もしくはそれ以上の賃金額を支払わなければならなくなりました。
派遣元事業者は派遣労働者に対する賃金体系を大きく変更する必要性が、そして派遣先企業に対しては派遣料金の大幅な変更が求められることになりそうです。
おまけ
私は過去派遣社員として働いた経験があります。
当時派遣の給与は通勤手当がなかったので、通勤代のかからない派遣先を選びました。
来年4月に施行される法改正により通勤手当、賞与、退職金も派遣労働者への支給が求められます。同一労働同一賃金の波は大きく来ていると感じます。